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<あらすじ>

ここは、カルビィーア・エルネイドと呼ばれる異世界である。
5柱の魔王によって5つの大陸は治められ、世界を維持していた。
そんなある日。
魔王に復讐を誓う3人目の勇者によって、ある世界は消滅してしまった。
消滅寸前、転移魔法を唱えた、
中央大陸を治める魔王、アレス・アブストラクティドは、
自身のある目的のため、
一人の異世界人を召喚したのだった…。



キャラクター紹介


まったりと超不定期掲載していきたいと思いますので、駄文+誤字脱字+その他諸々でグダグダですが、宜しくお願いします。
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<キャラクター紹介>
まったりと追加及び修正をしていきたいと思います。

名前:畑中未来
性別:女
年齢:18歳
種族:人間
髪の色:黒→黒×銀
目の色:茶→青
身長:155cm
一人称:あたし
設定:魔王アレス・アブストラクティドによって、異世界であるカルビィーア・エルネイドへと転移した少女。子どもの頃からアニメ・ゲーム・マンガ好きだったことから、周りにバカにされまくりだったことから、余り自分自身に自信を持てずにいたが、異世界でアレスを始めとする多くの魔物に期待され、自分に少しずつ自信を持ち始める。

名前:アレス・アブストラクティド
性別:男
年齢:不詳
種族:魔族
髪の色:銀×紫
目の色:緑
身長:185cm
一人称:我
設定:世界の中心であるカルビィーア・エルネイドの中にある、ヴィンセント城に棲む魔王。中央大陸フライハイトを治める、人を始めとする他種族との共存していく世界を作り上げていくことが夢である。

名前:スライスト
性別:不詳
年齢:不詳
種族:スライム
髪の色:緑(人型)
目の色:青(人型)
身長:175cm(人型)
一人称:僕
設定:アレス・アブストラクティドによって生み出された、魔物。スライムであるが、人型を取ることも可能である。

名前:ドライム
性別:不詳
年齢:不詳
種族:ドラゴン
髪の色:赤(人型)
目の色:緑(人型)
身長:195cm(人型)
一人称:吾
設定:アレス・アブストラクティドによって生み出された、魔物。ドラゴンで、火を扱う魔法を得意としている。また、水竜ウォダム、風竜ウィリア、土竜アスダム、雷竜サンダスがいる。

名前:ウォダム
性別:不詳
年齢:不詳
種族:ドラゴン
髪の色:青(人型)
目の色:緑(人型)
身長:180cm
一人称:私
設定:アレス・アブストラクティドによって生み出された、魔物。どういう訳なのか畑中であるシルヴィスと親しくなる。因みにエリシアとレミリアの製作した変身型の魔導具で、村人Aの格好している時は、茶髪に黒の目である。

名前:キメーリア
性別:不詳
年齢:不詳
種族:キメラ
髪の色:金(人型)
目の色:金(人型)
身長:180cm(人型)
一人称:俺
設定:アレス・アブストラクティドによって生み出された、魔物。キメラである。

名前:セイラ
性別:不詳
年齢:不詳
種族:ハーピー
髪の色:水色(人型)
目の色:黄緑(人型)
身長:165cm(人型)
一人称:あたい
設定:アレス・アブストラクティドによって生み出された、魔物。ハーピーである。同じくハーピーのアイラがいる。ネイル好きである。

名前:スフィア
性別:不詳
年齢:不詳
種族:ファッションスパイダー
髪の色:青緑(人型)
目の色:青(人型)
身長:178cm
一人称:私
設定:アレス・アブストラクティドによって生み出された、魔物。ファッションスパイダーで、主に衣類作りを行っている。同じくフィレオがいる。スフィアは女のファッションスパイダーでシンプル系の化粧を好み、フィレオは男のファッションスパイダーである。

名前:リアン
性別:不詳
年齢:不詳
種族:人面樹
髪の色:ピンク(人型)
目の色:赤(人型)
身長:163cm(人型)
一人称:私
設定:アレス・アブストラクティドによって生み出された、魔物。人面樹で、常に人型を取っており、料理担当をしているが、肉を焼くことしか分からない。他にも色々な人面樹がいるようだ。掃除・洗濯は苦手である。

名前:ミーシャ
性別:不詳
年齢:不詳
種族:ラミア
髪の色:黄色(人型)
目の色:青色(人型)
身長:164cm(人型)
一人称:わたし
設定:アレス・アブストラクティドによって生み出された、魔物である。アイシャドウ好きで普段からしているらしい。

名前:エリシア
性別:不詳
年齢:不詳
種族:セイレーン
髪の色:水色(人型)
目の色:青色(人型)
身長:160cm
一人称:ワタクシ
設定:アレス・アブストラクティドによって生み出された、魔物。セイレーンで、魔導具作成に目がない。同じくレミリアがいる。

名前:メイリン
性別:不詳
年齢:不詳
種族:リンクス
髪の色:青×白
目の色:紫
身長:130cm(人型)
一人称:アタシ
設定:アレス・アブストラクティドによって生み出された、魔物。リンクスという魔物で、牧畜場で、ベビーモス・コカトリス・ボルドー・アルミラージ・ケルビの世話を、同じくリンクスのメイラン、メイルン、メイレン、メイロンと共に行っている。

名前:セフィール
性別:不詳
年齢:不詳
種族:リザードマン
髪の色:緑
目の色:青
身長:185cm(人型)
一人称:オレ
設定:アレス・アブストラクティドによって生み出された、魔物。気の扱いの名人である。

名前:ザック
性別:男
年齢:不詳
種族:マーマン
髪の色:青緑
目の色:金
身長:195cm(人型)
一人称:オラ
設定:アレス・アブストラクティドによって生み出された、魔物。

名前:ロック
性別:男
年齢:28歳
種族:人間
髪の色:白
目の色:黒
身長:165cm
一人称:わし
設定:イッチの村の長老。年齢は若いが、村の中で一番の最年長である。村の継続に悩んでいるが故に数少ない年頃のテーヌとアンナに子作りを考えて欲しいと思っている。

名前:テーヌ
性別:女
年齢:15歳
種族:人間
髪の色:茶
目の色:茶
身長:158cm
一人称:あたし
設定:イッチの村の成人女性。去年、成人として迎えられたばかりで、コカトリスの生成に精を出している。ただ、子どもはまだ望んでいないことと出産すると死ぬことを恐れている。

名前:アンナ
性別:女
年齢:14歳
種族:人間
髪の色:黒
目の色:茶
身長:154cm
一人称:私
設定:イッチの村の女性。成人を迎えたばかりで、まだ、魔法は少し苦手である。また、テーヌ同様に命を落とす可能性が高い出産を恐れている故に子どもは希望していない。

名前:レックス
性別:男
年齢:17歳
種族:人間
髪の色:金
目の色:青
身長:180cm
一人称:俺
設定:勇者の生まれ変わりとして、魔王を倒すため、禁忌魔法を生み出し、リアルド・フォーツと呼ばれる別世界を消滅させた張本人である。実際、勇者の故郷を滅ぼしたのは、魔王の仕業ではないことを知らないまま、勇者が生まれ変わる運命から絶ってしまったのである。

名前:カシュナード・ヴィシャス
性別:男
年齢:不詳
種族:魔族
髪の色:銀
目の色:紫
身長:195cm
一人称:オレ
設定:東の大陸ブルアンドハーツを治める、魔王。人間たちを支配しながら、リッセンド王国を利用し、魔物を生成させている。

名前:グランヴェルツ・リッセンド
性別:男
年齢:45歳
種族:人間
髪の色:茶
目の色:黒
身長:168cm
一人称:わし
設定:東にある、魔王カシュナードの治める大陸の中にある、リッセンド王国の王。

名前:レフィーナ・グレイス
性別:女
年齢:不詳
種族:魔族
髪の色:銀×ピンク
目の色:緑
身長:165cm
一人称:妾
設定:西の大陸エスケティックを治める、魔王。美しいモノが好きで、醜いモノは嫌い。ということから、人間の中で美しいモノと醜いモノを分けている。カイシェイドに次ぐ魔王であることから、口調は年寄り臭い。

名前:ヴァルガード・ダミネイション
性別:男
年齢:不詳
種族:魔族
髪の色:銀×緑
目の色:青
身長:185cm
一人称:私
設定:北の大陸ミーティアを治める、魔王。アレス・アブストラクティドとは同時期に生まれた魔王であり、お互いに価値観は似ていることから、魔法描写を通して連絡を取ることもある。

名前:エルフィール・インヴァイアロン
性別:男
年齢:不詳
種族:魔族
髪の色:銀×青
目の色:ピンク
身長:158cm
一人称:ぼく
設定:南の大陸ナチュリアースを治める、魔王。魔王の中で最年少である。自然に流されるままに生きることをモットーにしているが、色々と退屈している。

名前:カルネイド
性別:不詳
年齢:不詳
種族:神
髪の色:金
目の色:銀
身長:180cm
一人称:私
設定:リアルド・フォーツの強い心から生まれ、異世界では創造神カルネイドとして謳われ、カルビィーア・エルネイドを創成した神である。今は神として引退しているが故に後生のために候補となる者を何人か鍛えている。

名前:アリア
性別:女
年齢:不詳
種族:神
髪の色:青・赤・緑・黄の4色
目の色:水色と桃色のオッドアイ
身長:168cm
一人称:アタクシ
設定:精霊の神アリアとして謳われている、ただ、几帳面の性格故に精霊魔法は非常に細かく設定されている故に普通に唱えただけでは暴走する恐れがある。それを覆すには何か必要である。

名前:グラン
性別:男
年齢:不詳
種族:神
髪の色:黄色
目の色:橙色
一人称:オレ
設定:食の神グランとして、焼いただけの魔物の肉が食べてみたいという強い心から生まれた神である。それ故にカルビィーア・エルネイドでは、焼いた魔物の肉という食生活のみが根付いている。

名前:ラドルフ
性別:男
年齢:不詳
種族:神
髪の色:緑色
目の色:黄緑色
一人称:おれ
設定:生活の神ラドルフとして、生活に関する道具に関する強い心から生まれた神である。ただ、精霊の神アリア同様に細かい故に≪水魔法・浄水≫、≪火魔法・弱火≫等などと言わなければ、発動しない。

名前:クルーツ
性別:男
年齢:不詳
種族:神
髪の色:紫色
目の色:青色
一人称:俺
設定:生成の神として、魔物や動物等を生成したい強い心で生まれた神。生成は簡潔にイメージさえ掴めば出来るようにしている。それ故に生成に≪闇魔法≫を使用しても気にしていない。

名前:フェニックス
性別:不詳
年齢:不詳
種族:神
髪の色:橙色
目の色:緑色
一人称:我
設定:生と死を司る神として、生きる者に対し、生死を管理している。また、不死鳥の涙を所有していることから、飲むと誰でも不老不死を授かることが出来る。自身のテリトリーから離れることはまずない。
<プロローグ>

「はぁ~………今年で大学生になる予定だったあたしが何を好き好んで野菜作りをしてるんだか。別に野菜は嫌いじゃないんけどさ」
とはいえ、頭の中で何となくという感じでイメージするだけで、意図も簡単に野菜が実るってのが不思議なんだよね。
それにここってさ?意外と生活環境はかなり良いみたいだし。
独り言のようにぶつぶつと言いつつ、あたしは、すっごく広い土地で、今は野菜作りを行っているのである。



ん?大学生になる予定だったあたしがさ?
何たってこんな所にいるのかって?
あっ!自己紹介がまず先だよね。
あたしの名は、畑中未来。今年の春に大学生になる予定だった、女子高生。年は18歳。髪は黒で目は茶だったんだけど、今は訳ありで名前は、シルヴィスと名乗っています。オマケに髪もこの世界に来てすぐなだけど、まるで、十二の国のというライトノベルみたいに髪は黒×銀で、目の色も目の色も青として変わっちゃったんだよね。別にいいんだけどさ。大学に合格したら、黒×銀にしたいって前々からあったし。



なんで、異世界人っぽいネーミングに容姿になってしまったのかって?
それには、ちょっと…深い事情があったんだ。





「受験票よし!筆記用具よし!貴重品よし!地図よし!参考書よし!携帯よし!S○itchよし!暇潰し系の本よし!」
今、あたしは、コレから向かう大学入試に向けて必要な荷物の再確認をしていた。
「おーいっ!未来。そろそろ行くぞ」
「はーい!今行く」
下から父である畑中誠に呼ばれながら、あたしは、荷物の入ったリュックを背負うと、下へと降り立ったのである。
「じゃあ…行くぞ」
「うん」
玄関を出て父の運転する車に乗り込むと、あたしは、駅に着くと共に電車で志望大学へと向かい始めた。



「はぁ~…後30分ぐらいで着くかなぁ。ん?何?アレ?光…?」
電車に乗りながらあたしは思っていると、妙な光が差し込みながら、今、正に起きている不可思議な現象に信じられないまま、あたしは、どこかへと消えてしまったのである。



「さっきの光…何だったんだろう。って…!ここはどこ!?え、えっと…携帯は…?け、圏外!?」
光が差し込んで来たような気がするのは分かっているものの、すぐに気が付いたあたしは、リュックの中から携帯電話を取り出すと、電波確認するものの、無意味だったのである。
「まさかと思うけれど、ここって…いわゆる異世界?」
というよりも、なんで?
さっきの光と関連してるのかなぁ?
ってかさ?何だってさ?こんな平凡過ぎるあたしがさ?異世界に転移したんだろう?
あたしの名前だってさ?異世界転移するような名前じゃないよ?
別に名前だけが全てって訳ではないけど、良くなろう系の異世界転移する主人公の名前は、≪有栖川光輝≫とか≪西園寺愛理花≫みたいなキラキラネームが多いから、そう思ってしまっただけだし。
「それは置いといて…ここって城だよね。ということは…?」
誰かがいるってことは間違いないだろうけど、何かゲームで魔王が待ち受けてますって感じの城のどこかなのかなと思っていると、カツン…カツン…と誰かが近付いて来る足音が聞こえ始めたのである。
「参ったな。我としたことがうっかりミスで経った一人の人間しか我が城へと転移は出来なかったようだな」
何だか物凄くすまなそうにしながら、銀×紫の髪に緑の目のした、耳はファンタジーの世界の中で良く見るエルフのように尖った、長身の黒衣のマントを羽織った青年が声を掛けたのだった。
「て、転移…?」
思わずとあたしは言葉を返してしまった。
「あ、ああ。我の名はアレス。魔王アレス・アブストラクティドである。そなたの名は何と言うのだ?」
「は、はい。あたしは畑中。畑中未来です。って…ま、魔王!?」
魔王っていったら、ゲームで良く人を襲う悪のボス的存在だよね。
何を呑気に自分の名前を答えてんだよ!あたし!
今すぐここから逃げないと、今、ここで魔王に殺されちゃうじゃん!
魔王と魔法すら使えない生身のごく普通の人間に勝ち目がないっての!
「別に気にしなくても良い。我は人との共存していく世界を目指している途中なのだ」
ただ、未だ人を始めとする多くの種族は、魔王は、恐れられているのだということを、アレスは説明したのである。
「共存する世界…?何か良くある話を聞くような」
「うむ。我は何らかの文献で共存していく世界があるというのを知ったのだ。我も同じようにしたいと願っているのだが、人を始めとする種族は、昔ながらの因縁から来るからなのか、魔王は倒すべき敵だと決めつけ、今か今かと新たなる勇者の誕生を願っているのだ」
「新たなる勇者…?」
「うむ。勇者は人々の希望なのだ。ただ、勇者は人であると同時に不老不死の我らに勝ち目がないまま、幾度も自滅するばかりなのだ…」
希望を与える筈の勇者の自滅していく運命を変えるために、また、人を始めとする他種族との交流を深めながら平穏を夢見るアレスは、この世界に生まれて5000年の今、この世界で5柱もいる魔王の中で唯一、共存を目指しているのだということであった。
「何だか悲しいですね………!」
あたしはそう言葉を返した途端、お腹の音がぐぅ~と鳴ってしまった。
ちょ、ちょっと…!あたしのお腹。マジでシリアスムードが台無しじゃん!
「ふっ…。そなたはお腹が空いているのだな。ちょうど我は朝食にしようとしていた所だ。付いて来るが良い」
「えっ!?ちょ、ちょっと………」
な、何か思っていたよりも凄く優しい手だなとアレスの手に引かれながら、今のあたしは、付いて行くことしか出来なかったのである。





<第1話>

「あの…ここは?」
さすがにずっと手は繋がれたままだということに恥ずかしくなったあたしは、今はアレスの隣で歩きながら、とにかくと現状把握したいことから聞いてみた。
「ここは、カルビィーア・エルネイドと呼ばれる世界の中心にある、我が城ヴィンセント城だ」
「か、カルヴィー…」
「言葉が難しいのならば、カルネイドだけで良い。それにしても、今回の勇者はやってくれたものだ…」
「な、何を仕出かしたんですか?その勇者って?あたししかこの世界に転移が出来なかったということにも理由があるんですか?」
「うむ。そなたのいたリアルド・フォーツと呼ばれる、2つの世界の中心に向けて自身の命と引き換えに消滅魔法を放ったのだ。我は咄嗟に転移魔法を施したのだが、思っていた以上にそなたの世界の者は多かったからなのか、そなたしか救えなかったのだ…。本当にすまなかった」
「………何だかどう言えばいいのか分からないけど、命と引き換えに消滅魔法って勇者は、とんでもない魔法を生み出してしまったんですね。後、あたししか転移出来なかったとアレスさんは言っていましたが、この城に60兆を超える人間を受け入れられるのかどうか不思議なんですけど?それにあたしのいた世界の国々は、常に戦争が絶えない国だって数知れずですし…」
言葉の壁だってあることから、平穏の維持なんて出来るかどうか実際問題の中で、非常に国際問題になるとしか言いようがないのだと、あたしは思わずと言ってしまったのである。
「60兆…か。確かに言われてみれば、この城だけでその人数はさすがに受け入れられないな。で、さっき言葉の壁や戦争…か。どこでも戦争はあるのだな。東の大陸を治めるカシュナードのように…」
ただ、争いを始めとする戦争は、何も生み出さないだけだということを、アレスは悲しそうな目で返した。
「カシュナード…?」
「うむ。我と同じく魔王の人柱なのだ。彼は人を利用し、同大陸内の戦争を繰り返しているのだ…」
「人を思うままに利用するなんて…酷いですね。人を何だと思っているのだろう」
「そうだな…」
アレスはそう返すと、食事が行われるホールの扉を開けると、ピンクの髪に赤い目のした女性やライトグリーンの髪に緑の目のした女性たちは、テーブルの上に何かの肉を焼いただけのお皿を並べている最中だったのである。
「ご苦労だな。リアン、ペアル、ヴァネス…」
「は、はい。アレス様。あら?隣にいるのは、どちら様ですか?」
「うむ。彼女は我が転移した畑中未来殿だ。彼女の分も頼む」
「は、はい。分かりました」
リアンはそう言いながら、厨房へと戻ってしまったのである。
「あ、あたし以外にも人間はいるんですね」
「いや。彼女たちは、我が生成した人面樹という魔物なのだ」
「えっ!?ま、魔物…!?」
まるで、人間にしか見えなかったし、人面樹から想像出来そうにない20歳前後の絶世の美女に見えてしまう彼女たちを見て、驚いてしまった。

だってさ?あたしの容姿ってさ?極めて普通だし?勿論、誰からもあたしのことは、美少女だとか言われたことなんて、一度もないしさ。


「畑中殿もなかなか可憐な容姿だと思うが?」
「えーっ!?そうかなぁ?そんなお世辞はいいですよ」
実際問題、あたしは、自身の容姿にすっごくコンプレックスだというのに、アレスはどうしてそんなことが言えるのかなぁと思ってしまった。
「そうですわ。畑中殿は魔物のワタクシたちから見ても素敵な方ですわ」
「そ、そうかな…?」
堂々とライトグリーンの髪に緑の目のした、ペアルに言われながら、思わずとあたしは、改めて自身の顔が気になって手鏡を通して見たのである。
「う、うーん。あたしには普通の顔しか見えないかなぁ。って…何この顔!?」
「そんなことはないさ。もっと自信を持つのだ」
「な、何かお父さんみたいなセリフですよ」
良く父から自信を持てとあたしは言われていた。
確かに自信を持っていたからこそ、志望大学への入試に必要な偏差値を手に入れ、後は面接試験だけだったというのに、この世界へと転移してしまったのだった。
いや、自信と容姿は関係ないか。多分。
って…アレ?あたしの気のせい?
「どうしたのだ?畑中殿?」
「あ、アレ…!?容姿もそうだけど、良くよく見てみたら、あたしの髪とか目の色。変わっちゃってる…!?」
手鏡を改めて見てみると、あたしの容姿は変わっていたのだ。
髪は何から何まで黒髪だった色から黒×銀に目も茶から青へと変わっていたのである。
「あー…この世界に馴染んだ髪と目に変貌してしまっただけだ。気にしなくても良かろう」
「き、気にしなくてもいいって…そう簡単に言われても…!」
アレスに言われるままにあたしは返すが、後ろから誰かに当たってしまったのである。
「あっ!すみません。お怪我はありませんでしたか?」
「い、いえ。え、えっと…」
「彼は我が生成した、スライムのスライストだ」
「初めまして、僕はスライスト。あなたはアレス様が転移した少女ですね」
国民的RPGを始めとする、ゲームで良く見るようなプルプルとした、スライムから想像の出来ない、緑の髪に青い目といった容姿をしている青年は名乗ったのだった。
「は、はい。畑中未来です。宜しくお願いします」
「はい。こちらこそ宜しくお願いしますね」
「とりあえず、畑中殿。そろそろ座るとしようか。城の中を歩き通しで疲れたであろう」
「は、はい。ありがとうございます」
そうアレスに言われるままにあたしは、アレスの隣の椅子に座ると、次から次へと人型という形で、魔物はホールの中へと入って来たのである。




<第2話>

「何だか凄いですね」
魔物でありながらも人間と変わらない容姿をしている、魔物が礼儀正しく椅子に座っていることから、あたしは思わずと言ったのだ。
「まあな。そなたと同じようにこの世界の人間も生きるために魔物を生成しているが…」
「えっ!?に、人間も魔物を生成…?どういうことですか?」
「いや…生きるために魔物も食用として必要なのだ。テーブルの上に並べられている肉は元をいえば、魔物なのだ」
「へぇー…そうなんですか。えっ!?ま、魔物の肉…!?」
「そなたの世界でも魔物の肉は珍しくはないであろう?」
「そんなことはないですよ。あたしのいた世界は魔物の肉なんて食べませんし、ファンタジーというか架空のモンスターの肉は、小説を始めとする物語の中でしかないですから」
「そうであったのか。すまぬ…」
5000年という年月を生きていても尚、知らないことばかりだということを、アレスはすまなそうにしながら謝ったのである。
「別に謝ることなんてないですよ。それはそれとして…コレって何の魔物の肉なんですか?」
「うむ。コレはベビーモスの肉なのだ。右の肉はコカトリス、左の肉はボルドーなのだ」
「ベビーモスにコカトリスにボルドー…ですか。う、うーん…」
「どうかしましたか?畑中殿?」
「本当に食べられるのかどうか気になると同時に毒抜きされているのか不安になっただけです」
良くファンタジー系の魔物は、毒があるということを作中で書かれていることが多いことから、あたしは気になってしまったのだ。
「気にしなくても良い。我が生成した魔物に毒は入っていないのだ」
「そ、そうですか。ただ、焼いただけなんですね。他に煮たモノとか揚げ物とか色々とあったらいいのにと思ったけど…」
他に添えている野菜とかパンとかないのは、正に魔王が治めているからなのかなとあたしは、お皿に盛られた料理を見たままの感想で答えてみた。
「他に調理法があるんですね。知らなかったです!」
厨房からリアンは、焼いただけの魔物の肉をテーブルの上に並べながら、興味を示しながら返したのである。
「それはまぁ…さっき挙げたモノ以外に色々とありますよ。別に焼いただけというのは、ワイルド且つシンプルでそれはそれでありだと思います」
「それについては…我も興味はあるが、まずは食事にしよう。せっかくの料理が冷めてしまうからな」
「そ、そうですね…」
朝から焼いただけの魔物の肉か…と思いつつ、アレスを始めとする魔物は料理を合わせると共に「「いただきます」」と言葉と同時に食べ始めたのである。
(アレ?日本と同じ風習なんだ。最も今はするかどうかは人それぞれだけど、どこか一緒で安心した)
心の中であたしは思いつつ、恐る恐ると用意されたフォークとナイフで、まずはベビーモスの肉を一口サイズに切り分けると、食べてみた。
「どうだ?畑中殿。お口に合うだろうか?」
「あ、アレ…?あ、あの…塩、ありますか?」
何だか素材の味が感じられず、ただ単に焼いただけのベビーモスであることから、あたしは、思わずと塩が欲しくなってしまったのである。
「シオ?それは何だというのだ?」
「え、えっと…素材の味を引き出す調味料です」
「素材の味を引き出す…?ふむ…。我としたことがそのようなことは聞いたことがないな」
「う、うーん。どうしよう」
「魔法で出してみてはどうかな?畑中殿」
「魔法!?そんな魔法なんて使えませんよ」
「そうなのか?我の見た所によると、畑中殿のマナは莫大なのだが…」
「マナ…?」
「魔法を使用するエネルギーみたいなモノですよ。頭の中で具体的なイメージと素質があれば、誰でも魔法は可能です」
スライストはそう言いながら≪水魔法・浄水≫を唱えると共にグラスの中に注いだのである。
「このような感じで魔法が可能です。お水、どうぞ」
喉は渇いているでしょうからとスライストはそう言いながら、グラスに注いだ水をあたしに渡したのである。
「あ、ありがとう。魔法はイメージ…ですか」
「うむ。試しにやってみると良かろう」
「そ、そうですね。何だか厨二病みたいで恥ずかしいけど、やってみます」
水は本当に美味しかったと礼を言うと、あたしは、マンガで読んだ召喚魔法を思い浮かべながら、アレスを始めとする魔物たちに注目されつつ、両手を前に出して唱えてみた。

≪出でよ…塩≫

すると、どうしたことでしょう?
ごく普通の人間にしか過ぎない上に魔法なんて幼児期にアニメの真似事ばかりしながら、遊んでいたヤツです。
そのせいで、昔から人にバカにされた挙げ句に集団でアレコレソレドレと毎日のようにいじめられまくりだったという、辛い人生を送っていたあたしです。
とりあえず、スライストさんに言われるままに魔法を唱えてみたのだけど、アレ?
不思議なことに目の前に塩が出て来たではありませんか?
「えっ!?う、嘘…!?マジ…!?」
「嘘もマジもないであろう?そなたの先程の魔法は、失われた魔法の一つ召喚魔法なのだな…」
「う、失われた魔法…?」
「うむ。今の時代を生きる者にとって召喚魔法は、既に失われた魔法なのだ。我も一度だけカルネイド様の魔法で見たことがあるだけなのだ」
「カルネイド…?それってこの世界の名前では?」
「うむ。正確にはこの世界を作った神なのだ」
「へぇー…。それにしても、子どもの頃は魔法の真似しても出来なかったのに…」
「恐らくはリアルド・フォーツには、マナを封じる結界があったのだろう」
それ故に具体的なイメージを持っていたとしても、魔法を思う存分に使用出来ないようにされていたのではないかと、アレスは説明したのだった。
「うーん。そうなのかなぁ。とりあえず、試しに塩を掛けてみていいですか?」
何しろ、熱々の何も味付けされていないことが分かった、ベビーモスを始めとする肉の味は、どんな味なのか気になっていることから、あたしは、一番に掛ける権利のあることから了承を得ると共に掛けてみたのであった。




<第3話>

あたしはどういう訳なのか分からないが、具体的なイメージを元に召喚魔法を唱えた途端、塩が出て来たことから、恐る恐るとベビーモスの肉に塩を少々だけ掛けてみたのである。


「あっ…!お、美味しい!まるで旨味たっぷり詰まった牛肉!?」
何も味付けされていない故に全く味が感じられなかった、ただ単に焼いただけというベビーモスの肉に塩を少々掛けるだけで、こうもあっさりと旨味が引き出されてしまうとは、正直言ってですが、塩は本当に偉大な調味料なんだなと改めて実感した、あたしである。
「ふむ。我も少しお借りしても良いかな?」
「は、はい。どうぞ」
アレスは、塩ということに興味を持ったからなのか、拝借すると同時に同じ量で塩を掛けたのだった。
「ど、どうですか!?」
「う、うむ!コレは………今まで感じたことのないな。こ、コレが…塩と我が生成したベビーモスが持つ味というモノなのか」
「僕らもいいですか?」
「は、はい。コレだけではあっという間に無くなっちゃいそうですね」
何しろ、今、この場に人型を取っている魔物は、優に1000は超えることもあることから、あたしは、10人に一瓶の割合で、塩の他に胡椒と共に召喚魔法で出してみたのである。
何しろ、焼いた肉は、塩・胡椒がシンプルに合う組み合わせなのだから。
因みに塩を掛けることで、コカトリスは鶏、ボルドーは豚みたいな味だった。
「今まで何だったのでしょう?アレス様」
「そ、そうだな。5000年間、我らは味という概念を知らないまま過ごして来たことに実に恥ずかしい限りだな」
すっかりと調味料の虜になってしまった、アレスを始めとする魔物は、驚きを隠せないまま言ったのである。
「5000年という気が遠くなる長い間、原始的な生活だったんですね…」
城は中世みたいな造りの割には、食生活は原始時代そのものなんだと思わずとあたしは思ったことを口にしてしまった。
「そう言われてしまうのも無理はないな。何しろ我を始めとするこの世界を生きる者は、食に関してはかなり疎いのだ」
「ええ。私たちは良く人間の街に行くのですけれど、人間も肉を焼いただけで食事をされていますわ」
それで、病んでいく老人や幼い子どもは少なくないのだとファッションスパイダーである、青髪に緑の目をしているスフィアに続いて言うと、隣にいた、フィレオは肯いたのである。
「肉だけという食生活は偏るからなのかな。やっぱり、野菜とか果物とかあれば、少しはマシかも知れないかな」
「ヤサイ?クダモノ?何なのだ?それは?」
「う、うーん。一言で説明するのはちょっと難しいんですけど、体に良いということですね。病気とかなりにくいんですよ。エルフの方には食べられていると思うんですけど…」
「残念ながら畑中殿。この世界のエルフもまた、人間と変わらない食生活なのですよ。大昔は森に隠れ棲む種族でしたが、勇者と魔王の長きに渡る因縁の戦いが始まった数千年前の時から、人里まで降りて来るや否や今では人と同じ暮らしをされているんですよ」
「そ、そうなんですか。あたしにとってエルフのイメージは、人と関わるのが大の苦手というか毛嫌いしているイメージしかなかったです」
「今は多くの種族は、人と関わることが多いんですよ。ただ、闇の眷属である僕たちには、心を開いてくれないんですけどね…」
それ故に人型を取りつつ、なるべく人との距離を持とうとしているものの、どうしても、瘴気がダダ漏れしてしまい、魔物だと感づかれてしまうのだと、スライストは言った。
「瘴気…?」
「うむ。我らは先程、スライストが言ったように闇の住人。ある程度のマナを持つ者であれば、瘴気は無意識の内に身を守るために拡散されてしまうのだが、まだ、マナを余り持たない者や生まれつきマナを持たない者が近付いただけで、拡散されず、理性を失ったまま、魔物化してしまうのだ」
魔物化してしまった者は、村や街等に雇われている冒険者によって退治されてしまうという悲しい争いの繰り返しだということを、アレスは言ったのである。
「う、うーん。瘴気を抑える魔導具みたいなモノがあればいいのに」
「瘴気を抑える魔導具…!?」
「は、はい。この世界は何か剣と魔法みたいな世界みたいなので、魔導具みたいな装飾品があれば、皆さんから洩れている瘴気を抑え込むことが出来るんじゃないかなと思っただけです。あたしのいた世界では、創作物で良く魔導具が登場してますから」
「魔導具は、ワタクシたちセイレーンは、今まで身体能力強化、精霊魔法を生み出す系として作成していますが、抑え込む系といいますと…」
「補助系みたいなモノですね」
「補助…ですか。新しい分野の魔導具になりそうですわね」
「何だか畑中殿が来てすぐ…我らに今までないことを気付かせてくれたものだ。感謝する」
「そ、そんな…お礼を言うようなことなんてしてませんよ。第一、あたしの知識は、どれもこれもですが、中途半端にしか過ぎませんし」
「それでも、そなたは我らにないことを色々と知っているではないか。ふむ…そなたに新たに土地を与えよう。そこで、ヤサイやクダモノというモノを育てて見てはくれぬか?」
「えっ!?で、でも…あたし一人だと大変です」
「それならば大丈夫だ。ドライム」
アレスは、一人で作業はさすがに荷が重かろうと思いながら、ドラゴンのドライムをこの場に呼んだのである。
「何でしょうか?我が主、アレス様」
「うむ。畑中殿と一緒にヤサイやクダモノといった作物を作ってくれぬか?」
火竜ドライムを始め、水竜ウォダム、風竜ウィリア、土竜アスダム、雷竜サンダスと協力して欲しいということだった。
「分かりました。我が主のため、畑中殿のため、吾らは誠心誠意を込めて尽くしましょうぞ」
「ど、ドラゴンと一緒…ですか」
「うむ。それならば問題は無かろう?」
「そ、それはそうですけど…」
「気にしなくても良い。吾らは先程、畑中殿の塩・胡椒というモノが気に入った。それと…」
「な、何ですか?」
「吾らに敬語は不要。畑中殿は吾らの恩人なのだから」
「そ、そうですか。い、いえ。そうだね。あ、ありがとう」
「ふむ。我にも敬語は不要だ。畑中殿、自由にするが良い」


何だかんだと言葉遣いは、ラフにしてくれて構わないことから、あたしは、その日の内に敬語を使用しなくなったのである。






<第4話>

「土地…広過ぎない!?」
朝食後、アレスから野菜・果物作りを任されてしまった、あたしは、領土内の中にある、与えられた土地の広さに驚きを隠せないでいた。土地というよりも城の庭らしいけど。
「ここで思う存分、野菜・果物を作ってくれとのことである。吾らも協力は惜しまぬ。まずは何から行えば良いのだ?」
火竜であるドライムは、人との協力が出来ることに何よりも嬉しいことから、ウキウキとしながら言ったのである。
「え、えっと…あたしも実は余り野菜作りとは詳しくないんだよね。とりあえず、召喚魔法で、野菜・果物の作り方の本を出してみるね?」
「うむ。畑中殿も未知の領域なのだな。作り方を知らなければ意味もないな」
ドライムは納得すると、あたしは召喚魔法で≪出でよ…野菜・果物の作り方の入門書≫と唱え柄召喚したのだった。
「え、えっと…まずは土の状態から変えないといけないみたい」
「ふむ。土竜アスダムの出番なのだな。アスダム」
「何でしょう?ドライム」
火竜ドライムに呼ばれた、黄色の髪に緑の目をしているアスダムは、土魔法で、本に書かれている内容に沿いながら、野菜・果物作りに適した土へとするように指示したのである。因みにドライムの髪は赤に目は同じく緑だけどね。どうでもいいことだけど。
「分かりました。では…」
「あのさ?この世界の魔法ってどういうモノなのかな…?」
「うむ。精霊魔法と生活魔法が合わさった魔法が基本だ。先程も朝食時にスライスト殿が唱えた魔法も掛け合わせたモノなのだ」
「へぇー…そうなんだ」
そう、あたしは答えると、アスダムは何やら長い詠唱が終えたようで、魔法を唱え出した。

≪土魔法・上質なる土≫

「じょ、上質…?」
「そうだ。今、この土はボロボロとしていて、向かないであろう。土魔法で改良を加えることで、育ちやすくなるのではないかと思ったのだ」
「そうなんだ。そういえば、スライストさんの魔法は詠唱していなかったような…」
「慣れれば詠唱はしないのだ。あの方は一番に魔物として生成され、アレス様に次ぐ魔法の使い手なのだ」
「へぇー…すごいな。あたしもイメージ出来れば、精霊魔法も出来るのかなぁ」
「さあな。そればかりは吾は知らぬ。で、次はどうするのだ?」
「え、えっと…うーん。どうすればいいのかな」
本に書かれている内容だけでは、何から何をすればいいのか正直言ってあたしも分からなかった。第一、野菜作りとかって基礎は習った覚えはあるけど、ここ異世界で見慣れた野菜・果物が無事に育つかどうか怪しいんだよね。
「とりあえず、思ったモノを思えばいいのではないか?」
「思ったモノを思う?」
「口に出さなくとも、何か作りたいなと思う気持ちがあれば…作物は出来る筈なのだ。吾がアレス様のイメージの元で作られたように」
「そういうモノなのかなぁ。とりあえず、すぐに食べられそうなモノを思ってみようかな」
ドライムに言われるまま、あたしは、何となく≪トマト≫をイメージしてみた。


すると、土竜アスダムによって品質改良(?)された土から、にょきにょきと生えて来ると同時に真っ赤で美味しそうなトマトがあたしの目の前で実ったのである。
「えっ!?う、嘘…!?何となくイメージしただけで?あっ!?でも、問題は味だよね…」
「そうなのか?」
「うん。ちょっと水洗いしてから…」
「それならば、水竜ウォダムの出番だな」
「私の出番なのね!任せて!」
「あっ!ちょっとでいいから。ちょっとで!」
青髪に緑の目のした、人間の女性にしか見えない、水竜ウォダムに向かってあたしは言うと、ウォダムは≪水魔法・浄水≫とスライストと同じ魔法を少々の加減で唱えたのである。
「あ、ありがとう」
「どういたしましてなのね!畑中ちゃん」
「ちゃ、ちゃん?」
「あ、ああ。ウォダムは誰でもちゃん付けする性格なのだ。気にしなくていい」
「またもー!ドライムちゃんったら!」
「…色々なタイプがいて当然といえば当然か」
「ん?何か言ったか?畑中殿」
「いえ、何も。とりあえず、一口サイズに切り分けよう。え、えっと…」
召喚魔法で≪まな板≫と≪フルーツナイフ≫を召喚すると、持ち方はどこかぎこちないが、食べやすい大きさにトマトを切り分けたのだった。
「トマトにはマヨネーズが欲しい所だけど、そのままでも十分に味はあるから…」
「まずは畑中殿から試すがよい。吾らはアレス様の次に頂くから」
「う、うん。って…アレスさんって土地の案内した後、どこかに行っちゃったけど、どこに行ったの?」
「ああ。1000年に一度行われる魔王会議に行ったのだ。まぁ、人間を始めとする他種族との対応をどうするべきかどうかの議論しつつ、各々の領土内の情報交換だな」
「へぇー…。ということは、あたしのことも話したりしてるのかなぁ」
「さあな。アレス様以外の魔王は、余り人は好まないようだから、敢えて話さないようにしているかも知れぬ」
「そうなんだ。とりあえず、食べてみるね」
実際問題、トマトって生よりもシチューとかじっくりと煮込んだヤツの方が好きなんだけどなぁ…とあたしは思いながら、一口と食べてみた。
「あ、アレ…?全然水っぽくない!?家庭菜園をやってた兄貴のトマトと同じ味だ」
スーパーで売ってるトマトは、もう、それはそれは、水っぽい感じで余り好きでは無かったのだが、あたしの兄貴が作ってるトマトは、味がぎゅっと詰まっているが故に苦手なあたしでも食べやすいトマトなのであった。
「そうなのか。吾には良く分からぬが…」
「別にアレスさんの次じゃなくてもさ?食べてみたら?切ったまま放置しとくと、傷むしさ…」
「う、うむ………。畑中殿がそう言うのならば、仕方ない」
ドライムは、畑中の押しに押されるままに主よりも先に頂くというのは、気が引けるものの、言われるままに一口サイズに切り分けられた、トマトを口にしてみたのである。




<第5話>

ドライムは、生まれて初めて≪トマト≫を食してみたのである。
「ど、どうかな?口に合うかな?」
「こ、コレは…!何という味だ。こんなのは生まれて初めての味である!」
ドライムがそう言うと、水竜ウォダムに続いて風竜ウィリア、土竜アスダム、雷竜サンダスもトマトを口にしたのだった。
「すごい!今まで食べたことがないの!畑中ちゃん、すごいのね!」
「ヤバい!コレ、ガチでヤバい!ウォダムちゃん」
「コレは何と表現したらいいのでしょうか?うー…ん」
「あ、ああ…。この世界に生まれて云々…」
ウォダムにウィリア、アスダム、サンダスは、すっかりとトマトの虜になってしまったのである。
「…ただ、良いのだろうか?こんな素晴らしいモノをアレス様よりも先に頂いてしまったのだが」
「だからさ?気にしなくても良いんじゃないかな?何でもアレスさんが先なの?」
「アレスちゃんは、私たちを生み出した主なのね!でも、畑中ちゃんの言う通りかも知れないのね!」
「そ、そうだな。何か新しい発見があれば、すぐに報告を…と言われていたが、事後報告で構わないか」
今は魔王会議で城を留守にしているが故に報告する術はないことから、ドライムは畑中の言う通りにしたのである。
「とりあえず、野菜はトマトだけじゃないから…ちゃちゃっと野菜・果物をこの調子で作っちゃおう」
序でに主食として、やっぱりさ?
日本人だし、ご飯が欲しいんだよね。
あたしは、女の子だけど、パンよりもご飯の方が好きなんだ。
トマトが上手く出来たことを良いことに、あたしは、今の間に出来る範囲で作ってしまおうと思いながら、野菜・果物作りを再開したのである。





一方、その頃。100年に一度行われる魔王会議として、各大陸の魔王が集まっていた。
中央にアレス・アブストラクティド、東側に魔物の書を開いている、カシュナード・ヴィシャス、西側に化粧の続きを再開している、レフィーナ・グレイス、北側にエルフィールを注意し続けている、ヴァルガード・ダミネイション、南側に行儀悪く椅子に座っている、エルフィール・インヴァイアロンである。
「…そろそろ魔王会議を始めたいのだが」
アレスは、集まるや否や以前と変わらず、身勝手に自分たちのしたいことを始め出した、魔王たちに向かって言った。
「もう少し待ってくれ…!」
「もう少しで妾も化粧は終わるのじゃ」
「ほら。エルフィール…そろそろちゃんと椅子に座りなさい」
「えーっ!?別にいいじゃんか。それぐらーい」
アレスは始めようと言い出した途端、彼らは会議よりも本や化粧等に夢中だったのである。
「とりあえず、私が聞きましょう。アレス殿の領土内にお変わりはないでしょうか?」
ヴァルガードは、エルフィールの注意することを諦めながら、まずは言い出しっぺのアレスの領土にお変わりはないかどうか聞いたのだった。
「ああ。我の領土内の人間は、近付いただけで魔物化するばかりだな…」
「…大変ですね。私の領土も似たようなモノですよ。私も魔物の生成を行っていますが、私はアレス殿と違って人化出来ないから仕方ないのですがね…」
「強く人化出来るようにイメージしてもですかな?ヴァルガード殿」
「ええ。私の領土はとにかく魔物たちは人々に何もしないことをモットーとしているせいなのでしょうかねぇ…」
魔王でありながら、人々の暮らしをただ単に傍観しているが故に人々からも恐れられずに済んでいるのだと、ヴァルガードは言ったのである。
「ぼくの所はねー?自然の摂理に沿ってるよー?人も獣を狩るように、魔物もまた、生きるために狩ってるよー」
生態系のバランスを維持するためならば、自然の摂理に沿って生きることを一番としている、エルフィールは、未だ背もたれを前に向けたまま、答えたのだった。
「妾の所は、醜い生き物は人だろうがお構いなしに襲っているのじゃ。妾の魔物は全て美しいモノばかりじゃからのぉ」
「…相変わらず美意識高いな。レフィーナ・グレイス。魔王ならば魔王らしく人を支配するべきだな。まぁ、最も今日は勇者がやっちまったよなぁ」
「…そうだな」
「ん?何なに?何をやらかしたのさ?」
「ああ。勇者が俺たち魔王を倒すためによ?自らの命と引き換えに消滅魔法を生み出し、どこぞの世界に向けて放ったらしいぜ。幾ら何でも別世界に向けて試しと称して命と引き換えにするとは、少しだけ見直したけどな」
生まれ変わる度、前世の記憶を引き継いだまま、勇者は新たに生まれて来るとはいえ、今回ばかりは、カイシェイドは勇者の行動に賞賛を称えたのである。
「別世界?何それ?」
「エルフィール。お主は何も知らないのじゃな」
「知らないから聞いてるじゃんか。レフィール」
「仕方ないでしょう。エルフィールはまだ、魔王としては最年少ですからね。別世界はですね。この世界とは別にあるリアルド・フォーツと呼ばれる世界のことですよ。最も別世界とこの世界との行き来は出来ませんし、こちらの世界の中心にちょうどいる者しか転移して呼ぶことは出来ません。まぁ、別世界の者を転移させる程、私たちは暇じゃありませんし、文明も遙かに遅れているでしょう」
「リアルド・フォーツ?」
「ただ単に我らがそう呼んでいる名前にしか過ぎないさ」
「へぇー…そうなんだ。それにしてもさ?いつも魔物の肉ばっかり食べてるけど、飽きない?ぼくさ?もう飽きちゃってさ」
「言われてみればそうじゃな。妾も3000年近く魔物は焼いておるが、どれもこれも同じ味じゃな」
「仕方ないだろう。魔物はシンプルに焼く。この世界は焼く以外にない」
最年長に当たるカイシェイドは、焼いて食べる以外の方法はないという一点張りであった。
「そうでしょう。魔物は焼く以外に何かあるというのでしょうか?」
「…そうだな。我も5000年近く生きているが、飽きたというのならば、何か考えるべきではないのか?」
(さすがに畑中殿のことは黙っておかないとな…。そうなると、不可侵条約が破られてしまう)
「ぼくって色々と考えるのって苦手なんだよねー。あーあ…他の領土に行ってみたいけど、どこに行っても同じ焼く以外の方法がないのか」
「そういうことじゃのぉ。妾たちは、仮にも魔王。他の領土内を見に行く等とはカルネイド様のお仕置きを喰らうことじゃろう」
「分かったよー。あのおばちゃんのお仕置きは嫌だもん」
生まれてすぐ悪さを仕出かし、創造神カルネイドの神殿の壁に落書きしただけで、お尻100叩きを受けたことのある、エルフィールは、お仕置きに怯えながら返した。
「さて、そろそろ解散するとしよう。次に会うのは…」
「ちょうど1000年後…だな」
次に会う日を決めると、魔王たちは、各々の治める領土内へと瞬間移動魔法で、ここ世界の中心である、エルネイドを後にしたのであった。




<第6話>

「ふぅ~…何とか出来たね」
アレスから用意された土地をあっという間に100は優に超える種類の野菜・果物だけで埋め尽くしたことから、あたしは、休憩と称して、召喚魔法で出した、ペットボトル入りの≪緑茶≫を飲みながら言った。
「お疲れ様です。それにしても、畑中殿。一仕事の後にこの緑茶というモノは、なかなかいいですな」
「でしょ!お茶って休憩の時もいいし、食事と一緒でもいいんだよ。あたしは断然、休憩と食事の時だね。周りはジュースとかコーヒーとか紅茶とかと一緒で、味が分かるのかってヤツだったし…」
「ふむ。吾らには畑中殿の言っている意味は未だ分かりませんが、吾らの魔法は役に立っておりますかな?」
「うーん。あれだけしとけば、虫とか寄って来なくて済むかなぁ」
風竜ウィリアと雷竜サンダスの魔法で、虫除け及び鳥除け等の対策は、バッチリかもと思いながら、あたしは返すと、魔王会議が終わったからなのか、アレスは戻って来たのである。
「戻ったぞ。ん?コレは…?」
「あっ!お帰りなさい。アレスさんに言われた通り一通りの野菜・果物を作っておいたよ」
「…なかなか凄いモノだな。思っていた以上にそなたのマナは莫大のようだ。コレだけの魔法をこなしておいて、疲れはないのか?」
「全然疲れてないよ。今日の夜は野菜を使ってカレーを作っていいかな?」
「カレー?」
「あたしのいた世界の料理の一つだよ。ただ、肉はどうしよっかな。ベビーモスは牛肉みたいな味がしたから合うのは確実だけど…」
「使ってくれても構わぬぞ。牧畜場でメイリンに世話を任せておる」
「メイリン…?」
「うむ。我が生成したリンクスという魔物だ。ただ、人型に近いが猫耳していてな…」
「別に気にしないけど?」
「そう言うと思った。で、野菜などの出来はどうなのだ?」
「うん!マジで美味しく出来てるよ。さっきトマトの味を確認したら、ガチで美味しかった」
「吾も勧められるままに試しに頂きました…」
「そうか。我も試しても良いかな?トマトというモノを…」
「どうぞー。さっき切ったヤツが残ってるから。やっぱり、先に頂いても言われなかったじゃん?ドライム」
「何だ?何でも我の許可がないと駄目だと思ったのか?ドライム」
「は、はい。何かあれば、すぐに報告を…と仰っていましたので。吾らはそう堅く規律を守っていただけです」
「別にすぐに報告を…というのは、事後報告でも構わぬ。我が留守の間は、先に自分たちで試してみることだろう」
「そ、そうですね。これからそうします」
「そうと分かれば、我もトマトというモノを………。おおっ!コレは…」
アレスもまた、生まれて初めてトマトを食すと、ドライムたちと同じ感想になってしhまったのである。
「今日のカレーの付き合わせにサラダにするけど、いい?」
「う、うむ。構わぬ!大いにやってくれ。それと少し後で話がある」
「な、何?話って?」
「うむ。少し名前を考えて欲しいのだ。畑中殿は、異世界人そのものの名前だからな…。こちらの世界に合わした名前で呼びたいのだ。いつ、どこで、他の領土内の魔王たちにそなたのことが知れ渡るか分かった物ではないからな…」
そんなことで、異世界人を匿っていると知ったらとなると、それこそ、不可侵条約は破られ、世界の均衡は崩れてしまうかも知れないのだと、アレスは言ったのである。
「うん。分かった。考えておくよ。他に話って?」
「それは、今は…だな」
何しろ、アレスが考えていることに受け入れてくれるかどうか分からないからこそ、今は話すべきではないと判断すると、部屋は幾らでもあるから好きに使ってくれても構わないと告げると共にまたどこかへと行ってしまったのだった。
「また、どっか行っちゃった。そういえば部屋って…?」
「うむ。吾が案内しよう」
「私が案内するのね。畑中ちゃん」
「あ、ありがとう。男の人よりも同じ女の子同士の方が少し楽かな」
「女の子同士と言っても…私は性別ってのが分からないのね。人間からすると、男でも女でもないみたいな感じなのね」
「そ、そうなんだ」
「とりあえず、ウォダム。頼んだぞ」
「任してなのね!ドライムちゃん」
ウォダムはそう言うと、数多ある城の部屋から、青系の部屋を案内したのである。
「青系…?」
「うん。今、畑中ちゃんの着てる服の色合いに合わせてみたのね。どう?」
「う、うん。いいよ。ただ、あたし…実は物凄く方向音痴なんだ。誰かいないと道に迷いそうで」
さっきまでいた、場所すらもどこ?って感じなのだ。
いや、マジで無駄に広いし。
どこに何があるのか分からないし、何よりもこの世界の文字すらも未だ見たこともないんだよね。
「そう。じゃあ…私が色々と城の中とか一緒に付いててあげる。それならいいでしょ?それに隣の部屋が私の部屋なのね」
「あ、ありがとう。それにしても、部屋の中…凄く広い割にはベッドとテーブルだけなんだ」
「そうだよ?他に必要なモノがあれば言ってね?あっ!畑中ちゃんは召喚魔法が使えるから自分で揃えられるか」
「うん。なんで、召喚魔法が使えるのかどうか不思議だけど」
「うーん。私は水魔法しか使えないけど、畑中ちゃんはアレスちゃんが言ってたように異世界人だからかな」
「でもさ?突然、使えるようになったりするモノなのかな?」
「んー…魔法ってのは突然使えるようになるのね。私だって水竜という名があるように、水魔法のことならば、何でもお任せなのね」
「そうなんだ。って…そろそろカレー作りしないと」
「そういえば言ってたね。カレーってどんなモノなの?」
「それは、出来てからのお楽しみってことで。必要な野菜収穫するためにさっきまでいた、野菜畑の場所と厨房に案内してくれる?」
「うん。いいよ」
何だかんだと外見年齢だけは近いウォダムとあたしは、いつの間にやらと話が進むと、サッサと夕飯の支度をするために、野菜の収穫と共に厨房へと向かったのだった。










<第7話>

アレス・アブストラクティドは、今は生と死を司るフェニックスの所へと訪れていた。
フェニックスは、この世界の創造神カルネイドと同時期に生まれた、神の柱でもある。

「お久し振りです。フェニックス殿」
「おおっ…。アレスもお変わりはないようじゃな」
「はい。フェニックス殿…折り入ってお願いがあるのですが、宜しいでしょうか?」
「ふむ…。アレスが直々にお願いとは何じゃ?」
「はい。不死鳥の涙を頂戴したいと思っております」
「不死鳥の涙…じゃと?」
不死鳥の涙を飲んだ者は、そのままの意味合いで不老不死を与えられ、不慮の事故等に遭わない限りは、永遠となる生を持つ涙なのである。
「はい。今日、私は転移魔法をしたのですが、リアルド・フォーツの人間を一人しか転移させることが出来ませんでした。その者は、この世界の人間から失われた魔法を扱いまして…」
「…リアルド・フォーツの人間を転移させたじゃと?下界で何が遭ったと言うのじゃ!?」
「は、はい。実は…」
人間たちの希望の光と呼ばれる勇者は、魔王を倒すために自らの命と引き換えに、消滅魔法を放った所をアレスは、転移魔法を同時に唱えたが、経った一人しか転移が出来なかったということであった。また、転移した人間は、創造神カルネイドと同じ召喚魔法の使い手だということを伝えたのである。
「下界では当の昔に失われた魔法の使い手…か」
「はい。我自身も驚きました。リアルド・フォーツの世界は我らが思っていた以上に文明は遙かに進んでいるようです。以前、お聞きした10000年前のリアルド・フォーツとは比べものにならない位に…」
「…ふむ。リアルド・フォーツの文明は変わらぬと思い込んでいたが、そうでは無かったのだが。寧ろこの世界…かも知れぬ」
「ええ。彼女から魔物の肉を焼く以外にないのかどうか聞かれた時には本当に耳も目も疑いましたよ」
「成る程のぉ…。良かろう。不死鳥の涙を用意しよう」
「ありがとうございます。フェニックス殿」
アレスはお礼を言うと、フェニックスは自身の涙を落とすと共にそれを渡すと共にアレスは、ヴィンセント城へと戻ったのだった。





「何だか凄い色合いですわね…」
リアンは、大鍋でぐつぐつと煮込まれている、色合いのカレーを見ながら言った。
「でも、匂いは悪くないのね!」
「色合いは確かにこの世界からすると、ちょっと…かも知れないけど、マジで味はいいから。それにしても、100人分(?)以上の用意を作るとは思わなかった………。カレールーも10箱以上も使うとは」
「今はこの城にいるのは、100体以上も魔物はいらっしゃいますわ。それにしても、料理は焼く以外に色々とありますわね…」
畑中の召喚した、料理レシピ集を見ながら、リアンは様々な切り方に加え、調理法が書かれていることから、今までの料理は何だったんだろうと思ってしまった。焼く以外にあるなんて…と改めて自身の認識の狭さを実感したのである。
「…文字、読めたんだ。そういえば、ドライムも少しだけ読めたような気がする」
「ええ。この世界と同じ文字ですから。ドライムはまだ、文字は習い始めたばかりですのよ」
「私もまだ、複雑な文字は読めないけど、こういった文字は読めるのね」
平仮名と片仮名は、何とかウォダムは読めるのだと付け加えながら言った。
「文字ってどこで習ってるの?」
「スライストから習っていますわ。スライストはアレス様に一番最初に造られた魔物ですので、文字の知識は勿論、魔法の腕は凄いんですのよ」
「そうそう。魔法だって無詠唱なのね!精霊魔法と生活魔法なら全て出来るのね」
「へぇー…。精霊魔法ってのは?」
「ええ。ワタクシは精霊魔法の方はちょっと…ですけど、ウォダム。お願い出来ますか?」
「えっ!?ここで!?ちょっと止めた方がいいのね!」
「…確かにそうだよね。ここでされると、せっかくのカレーが台無しになっちゃう」
「そうでしたわね。すみません」
何気ない日常に近い会話をしていると、アレスは漸くと戻って来たのである。
「何だか食欲がそそるような匂いだな…」
「あっ!お帰りなさいなのね。今ね?畑中ちゃんがカレーを作ってるところなのね」
「ああ。その匂いか…。何だか凄い色だな」
「大丈夫だよ?味の方は市販の素とか使ってるから」
「し、市販の素…?何なのだ?それは?」
「コレですわ。意外と便利ですのよ。中に入っているルーというモノを溶かして入れるだけですの」
リアンは、余りにも簡単且つ便利なモノであることを、強く力説しながら言った。
「そうか。そなたのいた世界は、思っていた以上に文明は遙かに上にいるようだ。10万年前に伺った文明よりも…」
「じゅ、10万年前って…まだ、人は、え、えっと………」
「すまぬ。難しいことを聞いてしまったな。それはそうと、畑中殿。服…なんだが」
「ん?服なら一通り召喚魔法で出したけど?」
「いや。この世界に見合った服も必要かと思っているのだが…」
この城にいるのならば、今、畑中の着ている、フード付きの迷彩柄に黒系の半ズボンに加え、スニーカーは問題ないが、もし、この世界の人間の暮らしを見に行きたいとするのならば、さすがに今の服装だと、異世界人丸出しであることから、周りから冷たい視線を送ってしまうのではないかと思いながら、アレスは言ったのである。
「う、うーん。異世界の服って…何だか厨二病みたいな感じなのかな」
「厨二病?」
「う、ううん。気にしないで。アニメとかゲームで見るようなファンタジー系の服なのかなぁって思ったから。アレスさんとかリアンさんとかウォダムさんが着てるような服がそうだから」
「ふむ。何か服装について希望があれば、ファッションスパイダーに頼んで見繕って貰おうか」
「うーん。そうだねぇ…。動きやすくて機動性重視みたいな感じがいいかな。スカート系は余り好きじゃないから、短いズボン系で」
「分かった。早速と頼んで来よう」
「後、色合いは黒か青系で。ピンクとか実は余り好きじゃないから」
「う、うむ。分かった…」
何となくアレスは、畑中のリクエストを聞き入れると、ファッションスパイダーの所へと向かったのである。
「畑中殿はピンク…お好きじゃないのですわね」
「う、うん。目がちょっと…シンドイんだ。あっ!別にリアンさんが悪いってことじゃないから」
「そう…ですわね」
「好き嫌いは人それぞれあるのね。そうそう…畑中ちゃん!」
「な、何?」
「私のことね?“さん”付けしなくていいのね!私のことはウォダムちゃんでいいのね!」
「ちゃ、ちゃん…?」
「そうなのね!宜しくなのね!」
「う、うん。今まで対等で呼び合う人とかいなかったから…慣れないかも知れないけど…」
「…色々とありましたのね。畑中殿」
「う、うん………」
あたしは、元いた世界が決して恋しい訳ではないけど、思い出したくない過去をふと思い出してしまったのであった。









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